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2017年12月8日
米国離れと中国接近、アジア諸国、党の統制に組み込まれた企業経営
今回のアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、アジア諸国の「米国離れと中国接近」の流れが明確であった。トランプ米大統領の日頃の言動から予測されたが、自由貿易体制の下でアジア太平洋地域の国々と共存発展してきた日本にとって、好ましからざる事態だ。

トランプ大統領は、日本が以前から提唱してきた「自由で開かれたインド太平洋戦略」をテーマに演説し、米国はインド太平洋地域のパートナーであり同盟国だ、と訴え、アジアに関与する姿勢を明言した。だが、多国間交渉を通じて地域全体に自由貿易のルールと理念を広げてきた先任者達の努力に背を向け、自国利益最優先の「アメリカ・ファースト」を声高に挙げ、発展途上にあるアジア諸国に大きな失望をもたらした。

アジア太平洋地域は、世界第1位の経済大国米国、第2位の中国、第3位の日本が取り囲み、世界で最もダイナミックで、世界で最も注目される重要な地域だ。第2次世界大戦後、この地域の国際秩序が自由貿易を基調とする米国主導で築かれてきた経緯から、これまでは米国首脳がアジア各国と政治、経済の連携などの協議を重ね、米国はアジア太平洋地域の安定を図るアンカーとしての地位を維持してきた。その集大成とも云うべき環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をトランプ米大統領はいとも簡単に離脱した。

一方、中国は、自国優先に突進する米国の隙をつき、地域の盟主を窺う。習近平国家主席は主席就任の2013年以降、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立、一帯一路(中国からヨーロッパに至るインフラ建設)構想を打ち出し、新興国や発展途上国から熱烈なるインフラ需要を喚起した。あれほどAPECで毎回非難された中国の南シナ海島嶼進出問題も沈静したかのようになった。トランプ大統領の演説の直後に、習主席は「アジア太平洋の平和と安定、繁栄はアジアの人々に属する」と宣言した。習主席がオバマ前大統領に提案し、拒否された「新型大国関係」の復活である。

「太平洋は米中両国を収めるのに十分な大きさがある。米中両大国は国際社会の発展と維持に大きな責任を負っている。太平洋の東側は米国が、西側は中国が責任を負う。発展モデルに関する考え方の違いを尊重すべき」。共同記者会見で習主席の発言に、トランプ大統領は、28兆円の米国企業への大型受注と云うお土産を貰い、気を良くしたのか、黙って聞いていた。中国は米国の合意がなくても実態がそうなっていれば良い、とする国だ。北朝鮮の非核化を、米国は中国の協力なしにはできない、だから5分5分だ、と。

かかる習主席の自信は、中国共産党第19回大会において,習近平総書記がケ小平以来の権力集中に成功し、中国が本格的な習時代を迎えたことによるものだ。近年、政治や軍事を除けば党の絶対的指導性は緩んできたが、再びあらゆる分野で強固にすることになった。経済政策の理念は市場より党・政府の指導を優位とし、政治が経済に強力に介入する内容になった。完全な市場経済なら、優勝劣敗で企業統合が進むが、中国は政府主導で統合を急ぐ。鉄道車両、海運、鉄鋼、発電、石炭の巨大な独占、寡占の国有企業を次々と誕生させた。

そして国有企業のみならず外資系企業を含む民間企業においても党組織の設立や取締役会に党を代表する役員を登用させ、企業経営にかかわる意思決定に党の意見尊重が強く求められて行く。常識的に考えれば、独占、寡占市場では競争原理が働かず、非効率な経済活動に陥りかねない。何ゆえ、リスクの高い政治的な経済改革を目指すのか。

その背景に、1979年に始めた一人っ子政策によって、生産年齢人口(16〜59歳)が既に2012年に減少に転じ、毎年数百万人単位で減少し続け、2030年以降は更なる急激な少子高齢化による本格的な低成長時代の到来がある。低成長による社会の崩壊を回避するには一刻も早い国際競争力の強化や海外進出拠点の構築、支配地域の拡大が不可欠、とするのはよくある話しだ。企業経営への政治介入と一帯一路構想が国(中国共産党)の命運を賭ける中国の最重要経済戦略とすれば、中国経済の一挙一動が世界経済に大きな影響を及ぼしかねない。

しかるに、中国の台頭によって地域秩序が変動するアジアにおいて、トランプ政権のアジア戦略並びに対中戦略が見えないのは極めて深刻だ。21世紀の日米同盟は日本の安全のみならず、アジア太平洋地域の平和と安全の礎にしなくてはならない。日本は自由主義秩序を標榜し、「自由で開かれたインド太平洋戦略」の具体化やTPP11の実現を通じて,志しを同じくする国々との連携を強化し、かつ米国外交の正常化を促すべきだ。また、日本は日中関係の改善に努めることだ。中国の影響力が及ぶ地域の秩序が自由で開かれた法の支配に基づくものになるよう、「一帯一路」の中において役割を果たしていくことが必要だ。
以上

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